絶対領域




信じたくはないけれど。

あの金の目を、忘れたフリはできない。



「……そっか、わかっちゃったんだね」



対立前に、バンちゃんは裏切り者の目星を伝え忘れてたと言っていた。


それをずっと気にしていたのかな。



「聞きに行こう、“あいつ”の本心を」



一緒に過ごした時間を、思い出を。

全部嘘にはしたくない。


どうするかは、話をしてからだ。




やっと、真実に逢える。




急いで院内を離れ、バイクに乗ってる皆と合流した。


ヘルメットをしっかり被り、あず兄の後ろに跨る。



ブオンブオン。

盛大に轟くエンジン音をかき消す勢いで、走っていく。



青にちょっとのオレンジを足した空に見守られながら、圧の強い風に負けないようにあず兄の腰にぎゅっとしがみついた。




繁華街を西に突っ切って。


栄えた空気の外れを選んで。


たちまち人気を避けていく。




ひだまりのスポットライトが、見透かす。


ほつれた糸の結び目。

砕けたガラスの割れ目。


トワイライトブルーを葬った、昼下がりの目醒め。



秘めごとが好きな宵闇は、まだ、出番がなくていい。





出会いの日以来、立ち入ることのなかった、絶対的なテリトリー。


――双雷の、箱庭。



『ここから先は、俺らの領域だ』



ちょっと高めなトーンとは裏腹に、心臓を直に衝いてくるみーくんの威嚇を反すうさせる。


ずっと、お互いに大事な“家”を守ってきた。




暗黙のルールを、今、ためらいもなく破る。