しかも双雷のたまり場にはオリがいる。
下っ端同士が混戦している間に、裏切り者がオリを殺るとしたら……やばい!
このままじゃオリも、神亀も双雷も、危ない!
悠長にしてられない!
「急いで洋館に行かなきゃ!」
紅組やオリのことを知らずとも、皆も違和感と焦燥感を汲み取ったようで、詳細を急かす者は一人もいなかった。
「ゆかりん、オウサマ!双雷のたまり場への近道、教えて!」
「よかろう。我が直々に案内してさしあげようぞ。紫氏はリーダーのそばについていてやってくれたまえ」
「わ、わかりました!」
みーくんをあんな目に遭わせてしまったのに、オウサマはもう怒ってないのかな。
なんて疑問が湧いたけれど、今はどうだっていい。
私が自分の病室である710号室に戻ってから、病衣から服に着替え、スリッパから靴に履き替える。
その間に、バンちゃんが退院の手続きをしてくれた。
他の皆は病院前にバイクを移動させ、すぐに出動できるようにしていた。
頭に巻かれていた包帯を取ると、病室の扉をノックされた。
「萌奈ちゃん、準備はいい?」
扉をスライドさせる。
バンちゃん……いや、“悪魔”が笑う。
「うん、ばっちり。行こう、バンちゃん」
「萌奈ちゃんは、」
歩き出して、すぐ止まる。
振り返れば、バンちゃんは病室前に立ち止まったままだった。
「裏切り者が誰なのか、わかった?」
葛藤してるみたいな声色。
伝染してしまったように、私の表情筋も引きつってしまう。
「うん、“あいつ”でしょ?」



