「私が、間違ってた」
ポツリ、こぼす。
せーちゃんの唇の歪みが、ほどけていく。
「皆まで恐怖や喪失を味わってほしくなくて、背負わせたくなくて、必死に隠してた」
ぶっちゃけ、できるならそうしたい。
これ以上負荷をかけるような真似、したくなかった。
双雷と神亀が友達のままいられなくなるかもしれないのが、嫌だった。
知らないほうがいいことってある。
だけど、皆は、知ろうとしてる。
「真相を探ってる皆に秘密にしてても、あとから教えたほうが辛いのにね」
無知な幸せは、皆にとっては、単なるハリボテに過ぎなかった。
そんなもの手に入れても、嬉しくないに決まってる。
「皆の気持ちを考えてなかった。バカみたいな理想に執着してたの」
皆のことを、信じていなかったわけじゃない。
ただただ不安だったんだ。
優しい皆が、紅の色に染まってしまうのが。
『ごめん。もう、お別れだ』
――“あの時”みたいに、皆まで離れていくのが。
たまらなく恐ろしくて、抗っていた。
「皆はとっくに一緒に背負ってくれようとしてたのに……最低、だね」
トラウマは簡単に消えてはくれないし、傷つけ傷つくのは今でも苦しいけれど、もう見て見ぬフリなんかできない。
壊れたオルゴールが、示唆してくれた。
天使と悪魔で踊り続けるのは、限界だって。
ショパンの「別れの曲」を聴いて泣くことは、きっともうない。



