「……姉ちゃん、また、どっか行くのかよ」



ハッと息を呑む。

たどたどしく視線を移す。


せーちゃんは辛そうに私を正視して、唇の端っこを歪めていた。




『どうして、こんな無茶すんだよ!』


『また“あの時”みたいに、一人でどっか行っちゃったのかと思った……』



西側の倉庫で目を覚ました時。

せーちゃんは私を強く抱きしめて、悲痛を嘆いていた。



あそこに来れたのは、バンちゃんが万が一を考慮して、現在位置をそれとなく教えたからなんだろうけど……。



睡眠薬を飲ませてまで関わらせないようにしていたのに、結局傷つけて、困らせてしまった。


かけるのは心配だけのはずだったのに。



私は同じ過ちを犯してしまうの?



「『大丈夫、どこにも行かないよ』って、言ったじゃねぇか」


「萌奈が俺に信頼を教えてくれたんじゃないか。俺たちはそんなに頼りないか?」


「モエモエは一人でなんでもしようとしすぎだよ~?」



あず兄も、しん兄も、ゆーちゃんも。

どうしてそんな、温かいの?


全てを知ったら、絶望するかもしれないのに。



悲しんでほしくない。

苦しんでほしくない。


それなら何時間もお説教されるほうが、ずっといい。



だけど、違うね。


それは私の願望を押し付けてるだけだね。



皆は、望んでない。



私の想いと皆の想いが交わることがなくても、独りよがりじゃ傷を癒せないのなら、受け入れなくちゃ。

いい加減、認めなくちゃ。




わがままは、おしまい。


約束したもんね。