「よ、よかった、です……」


一番に返してくれたのは、意外にもゆかりんだった。



「こ、このまま萌奈さんの記憶が戻らなかったら、どうしようって、思って……っ」


「ちょっとゆかりん泣かないでよ」



神亀の皆だけじゃなくて、ゆかりんも涙目になるほど心配してくれてたんだなぁ。


嬉しくなっちゃうのは、不謹慎かな?



「ぼ、僕、謝りたくて」


「謝るって何を?」


「み、3日前のこと、です。も、萌奈さんは記憶喪失になって心細かったはずなのに……ぼ、僕、何も言えなくて、余計に追い詰めるだけだったから……」



もしかして気にしていたの?

この3日間、ずっと?


そんなこと、悩まなくていいのに。


ゆかりんは相変わらず優しいな。



「謝らないでよ」


「で、でも……」


「そもそもゆかりん、大したこと言ってないでしょ?きついこと言ってたの、ほとんど“あいつ”じゃん」



ね?、とアプリコットオレンジの髪をぽんぽん撫でる。


ゆかりんが謝るようなことなんか、ひとつもないよ。



それでもゆかりんはなかなか吹っ切れない様子だったが、溜まり始めていた涙を強めに拭った。



「も、もう、心細くありませんか……?」



この子は、ほんとに。

どこまで優しいんだろう。



「うん」


たった2文字で充分だった。


元気有り余る笑顔に、ゆかりんはようやく胸を撫でおろした。