絶対領域







1週間後。




放課後になった。

校門前で、人を待つ。


私一人で、ではない。




「遅ぇな、あいつ」


「まだ10分も経ってないぞ」



腕時計で時間を確認するあず兄に、しん兄が呆れ気味にため息を吐いた。




しん兄こと、千間 慎士【センマ シンジ】。



こげ茶色のサラサラな髪や黒縁メガネをかけてる見た目からは、想像つかないだろうが、こう見えてあず兄と同じヤンキーだったりする。


でも、ヤンキーであろうと、しん兄は真面目で頭がいいんだよ。



唯一のヤンキー要素といえば、両耳に1つずつ付けているピアスくらいかな。



あず兄とは中学からの親友で、私とも昔から付き合いがある。


そういえば、あず兄、「高校3年生になって久し振りに同じクラスになった」って喜んでたっけ。




「もう待ちくたびれたー!あいつ、のろのろ歩いてるんじゃないのぉ?」


「退屈なら、ゆーちゃんが走ってせーちゃんを連れてくればいいんじゃない?」


「……無自覚に毒づくのやめてよぉ」



ぷくっと可愛らしく片頬を膨らませても、ゆーちゃんのご機嫌伺いは誰もしない。



この可愛い男の子は、大宮 悠也【オオミヤ ユウヤ】。

あだ名は、ゆーちゃん。


高校1年生で、私の隣のクラス。



私と同じくらいの背格好で、右目の下にほくろがある。


ちょっとわがままなところが長所であり、短所でもある。



明るめのチェリーレッドに染まる髪は、綺麗に切り揃えられている。


パッツンの前髪がここまで似合う男の子、そうそういない。



こんな可愛い外見なのに、右に3つ、左に2つもピアスを付けている。


ちなみに、ゆーちゃんもヤンキーだ。