絶対領域




じわりじわり、胸あたりに影が帯びていく。


この予感が当たってないといいけど。




内心モヤモヤしつつも、体は止めることなく動かし続けた。



下っ端相手の加減の調整が案外難しくて、無駄に体力を浪費してしまう。


それに走り回りすぎて、足もガクガク震え出してる。



呼吸するのもしんどくなってきた。



でも、頑張らなきゃ。


このくらいの苦しさ、なんともない。



嘘じゃないよ。

ほんとだよ。




「ぅあ、っ」

「うっ……!」


「……はぁ、はぁ……」



1対1で戦ってた双雷と神亀の男子の首に、手刀を食らわせた。


脳を揺さぶり、同時に気絶させる。



現在、ここにいる下っ端たちの半分以上は失神しているか、戦意喪失している。



あとちょっとだ。

あとちょっと頑張れば、皆のところに戻れる。


居場所を守り切れる。




どれくらいの時間が経っただろう。



シャッターの向こう側は、未だに月が主役。


神聖な輝きに、眩暈がする。



あず兄たちはそろそろ起きたかな。

心配してる、よね。



安心してね。


もうすぐ帰るから。




息を整えながら、残りの下っ端たちをどうにかしようと方向転換する。


直後。



「あ、れ……?」



カクン、と。

片膝が力なく曲がった。


体力の限界が近づいてきてるんだ。