絶対領域




まずは、この乱闘を片付けないとね。



夜の静けさを感じられない場違いなむさ苦しさをかき分けて、次々と喧嘩を食い止めていく。


金属バット片手に数人が集まって、抗争しているのが目に留まった。



「だーかーらー」



気配を殺しながら、そちらに走っていく。



「噂に惑わされて、」



ちょうど全ての金属バットが振り下ろされた。

ガンッ、と力強く交差し合う。



「みだりに敵認定してるんじゃなーい!!」


「っ、」

「えっ!?」


数本の金属バットが重なった部分を、下から蹴り上げた。


弾かれた反動で、金属バットは後方に飛んでいく。


1本だけ私のほうにやってきた。

華麗にキャッチし、今度は足元を弾く。



「あんたたちが戦ってる理由は、全部間違ってるんだってば。そんなに敵対したければ、族の名前を掲げてじゃなくて、個人でやりな」



バランスを崩して転倒した奴らに、半分八つ当たり。


口が少し悪いのは許して。

これでも説得を邪魔されて、イラついてるの。



ふぅ、と息を吐いて、金属バットを放り捨てる。


カラカラ……。

転がっていく様を眺めていたら。



視界の隅で、また、金色の瞳を捉えた。


と思ったら、すぐいなくなる。



これで二度目だ。

見間違いじゃない、よね?


まさか本当にあいつがここにいるの?