絶対領域




「こっちだよ」



真後ろに移動していた私は、首後ろめがけて勢いよく片足を振り回した。


たった一撃で伸してしまった彼は、やっぱり所詮下っ端。

ちょっと力が強すぎたかもしれないな。



この戦い方を教えてくれたのは、オリだった。


どこに体重をかけたら、どこを突いたら、どう動いたら、敵を仕留められるのか。

弱い女の私でも戦える術を。



体力も筋肉もついたし、メンタルも鍛えられた。


傷つくことにも慣れてしまった。



女子力が低下したり、「天使」だなんて異名が付いたりして、平凡だった私からは遠くかけ離れてしまった。



けれど、その分、愛をもらった。

愛を、あげた。



それが私の強さの源だった。




「うあっ」

「っうぐ、」


双雷と神亀関係なく、争ってる者の間に容赦なく割って入っていった。



喧嘩両成敗。

一番悪いのは紅組だけれど、実際に戦ってるあんたたちも悪い。


どっちの味方もしないし、敵になるつもりもない。ココ重要。


中立の立場であることをアピールしながら、片っ端から牙を折っていく。



予定通り……とはお世辞にもいかなかったけど、最後に「全ては天使のせい」として噂を流せば、万事解決するだろう。


天使の噂は、この街では特に面白がってくれる。


始めたのも、鎮めたのも、天使。

そういうことにしておけば、紅組が流した噂を上書きし、これまでの矛盾をごまかせる。