絶対領域




神亀の皆、血が上っちゃってる。

それに煽られて、双雷までピリピリしてる。



「最初に喧嘩売ってきたのはそっちだろ?」


「はあ?何ふざけたことほざいてんだ!」


「だが助かったぜ。その女の口車にまんまと乗せられるところだった。敵対してんのが嘘なら、仲間の言葉も嘘になっちまうもんな」



双雷の男子は私と目が合うと、気まずそうに瞼を伏せた。


仲間の言葉って……裏切り者が双雷にいることは確定ってこと?



「あ、まさかその女が来たのも、お前ら神亀の策略か?卑怯な手、使ってんじゃねぇよ」


「なわけねぇだろ!被害妄想してんじゃねぇよ、ダッセーな」



まずい。

売り言葉に買い言葉。


奥のほうでは既に、口では足りずに手も足も出ている。



なんで、こうなっちゃったの。


洗脳が解けかけてたのに、すぐに引き戻されちゃった。



やだよ。

やめてよ。



「い、言ったじゃん!ねぇ!戦っても、傷ついても、意味なんかないんだって!!」



どれだけ叫んでも、ノイズまみれにされてしまう。


乱戦が本格的に再開され、ところどころから鉄の衝突音や拳銃の発砲音が鳴り渡る。



私の声は、届かない。