絶対領域




初めに説得に揺らいでくれたのは、神亀の下っ端だった。


仲間同士で顔を見合わせて、悩ましそうに俯く。



形容しがたい不安定な雰囲気は、瞬く間に双雷の下っ端にも伝染した。



明らかに闘争心が薄れていってる。

自分たちの行動を疑い始めたんだ。


このまま訴えかけ続ければ、うまく事態を収められる……!



「今まで皆は騙されてただけ……」




――ドゴォッ!!


「ぐあっ……!!」



わざとかと思うほどタイミングよく、コンクリートを伝って響いた。


誰かを殴る音と、悲痛な呻き声。



なぜ。

せっかく今、いい空気になりかけてたのに。


……なぜ!!



まさか裏切り者が?あるいは紅組?



考え込んでる間に、再び誰かが吹っ飛んだ。


ズサササ、と地面に背中が擦れる。



倒れたのは、神亀の男子だった。

じゃあ殺ったのは、双雷の……?



「今の誰、が……っ」



騒ぎのあったほうを向き、目を丸くする。



「え?」



今、一瞬、確かに見つけた。


見知った、金色の瞳を。



どうしてここにいるの?




「お前らよくも……!萌奈さんの話、聞いてなかったのかよ!」


「聞いた上で、俺ら神亀に喧嘩を売ったってことか?あぁん!?」



真っ白になった脳内をつんざく、怒声。


解決しかけた雰囲気は殺気に包まれ、もう、あとには引けない。