火のないところに煙は立たない?
……違うよ。
嘘は簡単につける。
人は簡単に騙される。
だから大切な真実が、日の当たらない場所に追いやられてしまうんだ。
この世には、数多くの真実の中にどれだけの嘘が潜んでいるのだろう。
知りたくもない。
「ま、真っ赤な嘘って……それこそ証拠が……!」
「本当にわからないの?」
それとも、それも嘘?
「今まで幹部メンバーが争ったことはある?双雷と神亀の騒動を、これまで聞いたことは?」
「きょ、共闘なら……」
「ほらね、敵対してないじゃん」
裏切り者の狂言よりも、一人一人が見て聞いて感じた生の声とシーンを思い出してみてよ。
物理的な証拠がなくたって、汲み取れるはずだよ。
「仲がいいフリしてるだけかもしれねぇだろ!」
「仲いいフリ?ありえない。一目でも見たことのある人はわかるでしょ?あの仲の良さが偽りじゃないことくらい」
ばっさりと否定すれば、双雷の男子はとうとう言い淀んだ。
一拍の静寂。
膨れ上がった戸惑いに、光を点す。
「あなたたちの総長を、幹部を……仲間を信じて!」
答えはここにあるよ。
帰り道はこっちだよ。
大丈夫。私が示してあげる。
間違いを認める恐怖に打ち勝って、武器を捨てて。
ほら、こっちにおいで。
一緒に帰ろうよ。



