絶対領域




「天使って、あの……?」


「嘘、だろ?」



戸惑いの波が、徐々に大きくなっていく。


そう、例の噂の天使だよ。

どうも初めまして。



「だ、誰が信じるかっ!!」



敵意むき出しの双雷の男子が、さっきよりも鋭く睨んでくる。


さすがにすぐには受け入れてくれないか。

だよね、想像してた。


ぶっちゃけ半信半疑だっていいんだ。


ここに“天使”がいるという事実が、大事。



取り乱してるってことは、少なからず私の認識が変わったってことでしょ?



「お前ごときが天使なわけねぇだろ!」


「萌奈さんを侮辱してんのか、てめぇ!」



こうやってすぐに口喧嘩が勃発しちゃうのは、戦闘意欲にあふれてるせいだろうか。


喧嘩っ早いな。

あず兄みたいに短気にならないでよ、まったく。



「証拠がねぇじゃねぇか。デタラメに決まってる」


「証拠?」



ピクリ。

反応した私に、双雷の下っ端は「な、なんだよ」と若干気後れする。


疑いまくりのくせに、そのデタラメ天使を相当怖がるんだね。可愛い奴。



「証拠、ねぇ……」



さっきのお返しに、私も嘲笑ってやった。



「それならあなたたちは、双雷と神亀は仲が悪い敵同士だという証拠でもあるの?」


「そ、それは……」


「無いんでしょ?ううん、あるわけがない。だってあの噂は全て、真っ赤な嘘なんだから」