絶対領域




あまり責めた口調にならないよう注意しながら続けようとしたら、ハッと嘲笑を吐かれた。


1人の男子が一歩近寄り、ガンを飛ばす。

見たことのない顔だ。おそらく双雷の下っ端だろう。



「お前の言葉なんか誰が信じるか!どうせお前も神亀の仲間だろ!」


「おいっ、萌奈さんの悪口を言うな!」



敵意を放つ先が、私から神亀の下っ端に移された。



いけない。

このままじゃ、口論から攻撃に発展しかねない。


せっかく意識をこっちに向けられたのに!


どうにかもう一度流れを引き戻さないと。



やはり、矢浦萌奈としてでは、神亀側と疑われてしまう。


それじゃあダメだ。

中立の立場にならなければ。



私がここに来た意味を叩きつけて、こっちに注目せざるを得なくさせてやる。



「私は、どちらの味方でも敵でもないよ」


「は?」

「え?」



双雷の下っ端も、神亀の下っ端も、意味不明そうに首を傾げてる。


オウサマを見習って、特大爆弾を投下してあげる。

さらに驚く準備はいい?



「私は――“天使”」


「……て、んし?」



ミルクティー色の髪を、ふわっとなびかせる。


二コリと微笑すれば、ごくりと生唾を飲み込む音がした。