絶対領域




しん、と静まり返った。


先ほどまでの荒れ模様が嘘みたい。



歌をフェードアウトさせていき、全体を見渡した。


驚愕、困惑、唖然……。

それぞれ感情がわかりやすく表れてる。



絶句して当然だよね。


ここにいる人にとって、私の登場は全く推測できなかっただろうし。




「も、萌奈さん!?」


「なんでここに!?」


「あの人って、神亀のとこの……?」


「女一人でこんなとこ来て、バカじゃねぇの?」




だんだん頭が状況を理解し始めたのか、口々に疑念をボヤく。



今、下っ端のほとんどが私の存在に錯乱している。


一瞬でも対立から考えを逸らせてよかった。




「『なんで』も『バカ』もこっちのセリフだよ」



大げさなため息が、人数の多さにぎゅうぎゅうになってる倉庫内に広がる。



「ここで何してるの」


質問じゃない。

戒めてるんだ。



「双雷と神亀で戦って、バカじゃないの」



せっかく消えかけたざわめきが、早くも復活する。



私が決闘のことを知っていることに、そんな動揺する?


私がここに来た時点で、なんとなく予想つくでしょ。



「この戦いに、意味なんかない。皆、噂に踊らされてるだけだよ」



何も知らないのは、そっちだよ。

紅組の思い通りにならないで。