絶対領域




すーすー、安からな寝息を立ててる2人に、そっと毛布をかけてあげる。



紅茶に溶かした睡眠薬は、即効性。

効き目抜群だったようだ。


微塵も疑わってない2人を深い眠りにつかせるのは、胸が痛む。


ちょっと無理やりで、ずるいけど、コレしか思いつかなかったんだ。




「……行くんだね」


バンちゃん、やめてよ。

そんな、暗い顔しないで。



私はこれから傷つくんじゃない。


守りに行くんだよ。



「わかってるだろうけど、この作戦は無茶だし、危険だ。どんな結果になるかは、萌奈ちゃん……いや、天使である君にかかってる」



私にしかできないこと。

私だからできること。


私だけに託すのは心苦しいかもしれない。


それでも、信頼してくれてる。



「頑張るね。頑張って、終わらせてくる」



せめてその期待に応えたい。


わがままを叶えてくれた分、報われてほしい。



「本当は頑張ってほしくないけど……うん、頑張って。萌奈ちゃんが無事に帰ってくることを、願ってる」



エールを言わせてる感が拭えなくて、眉尻を垂らした。


待ってくれてる人がいるなら。

必ず帰ってこなくちゃいけないね。



私はオルゴールみたいに壊れない。


これを永遠の別れにする気は、さらさらないよ。