絶対領域




もうそろそろ時間だ。



たまり場を出て行きたくても、一人では帰宅もさせてはくれない。


過保護な2人には、ずるい方法、使うね。




「み、皆、ちょっと休憩したら?」



バンちゃんほどではなくても、できるだけ自然を装う。


自然に……自然に……。

あれ?私っていつもどう振る舞ってたっけ。



2人のそばを離れ、キッチンへ移った。


ソファーのほうに背を向けてるこの体勢なら、あっちから顔が見えなくて、都合がいい。



お湯を沸かしてる間に、カップを棚から取り出す。


カップの持ち手を掴む指先だけが、赤く滲んでいた。


せーちゃんだけじゃ、なかった。

私も無意識に拳を握り締めていたんだ。


カップを置いてから手のひらを開いてみれば、案の定くっきりと爪痕が刻まれていた。



「姉ちゃん?」



ビクッとなりかけて抑え込めたのは、我ながらすごいと思う。


2回深呼吸をして、顔だけ振り向いた。



「せーちゃん、あず兄、バンちゃん。紅茶でいい?」


「うん!」



代表してせーちゃんが返答する。



一瞬、見抜かれた気がした。

敏感になりすぎだ。


緊張してる場合じゃない。


もっと余裕持っていないと。