絶対領域





「俺にだってこういう時くらいあるよ」



あまりに自然にしてるから、私まで騙されそうになる。


不意にバンちゃんと目が合った。

ごくりとオムライスを飲み込んでしまう。


バンちゃんは一瞬だけウインクをすると、すぐに目を逸らした。



心では絶対に嘘をついてる罪悪感があるはずなのに、私にまで飄々としてくれてる。


私のわがままに付き合わせて、ごめんね。



「万にだけ頼ってもいられないだろ」


「……そう、だな」



しん兄の言葉に返事をしながらも、あず兄の表情は少し曇っていた。



まさかあず兄、何か勘づいてきてる?

やばいやばい。


何か違う話題を……!



「あ」


突然、通知音に重なって、ゆーちゃんが声を上げた。



「ユカからメールが来たぁ」



ゆかりんから?


わざわざそうやって言うってことは、話に関わることなのかな。



「双雷も僕たちと一緒らしいよぉ。今日北校は補講があって、学校では下っ端たちを見かけたけど、たまり場には1人もいないんだってさ~」


「偶然じゃ、ないよな」



視界の隅に、せーちゃんの拳が入り込む。


手の甲には筋が浮き出ていて、やや震えている。

強く握りすぎているんだ。



「やはり、双雷も何らかの関係があるのは間違いないようだな」



しん兄の呟き声が、いやによく響いた。



先日オウサマとの『トーキング』後に双雷の下っ端が襲ってきたことを踏まえれば、確信を持ててしまう。


そこから今夜の対決に結び付けるには、現段階では情報が足りなさすぎる。