「はい、お待ちどうさま」
目の前のテーブルに、お皿が置かれた。
「わあっ、オムライスだ!」
具材たっぷりのチキンライス。
その上に、とろっとろな卵。
ケチャップでハートマークが描かれてるところも、可愛らしい。
ささっと作ってくれたとは考えられない。
「美味しそう!」
「召し上がれ」
「いっただきまーす!」
手を合わせてからスプーンを持ち、できたてほやほやのオムライスをすくう。
卵とご飯を一口分取って、頬張った。
「美味しい!」
「それはよかった」
「僕も食べた~い!」
「悠也はもう食っただろ?」
また今度ね、とゆーちゃんをなだめて、バンちゃんは早速洗い物を始めた。
オムライスを半分食べた時には、洗い物は終わり、賑やかな空気はいつの間にか風化していた。
私を除いた皆で、下っ端の件について話し合う。
オムライスに夢中なフリをして、こっそり会話を盗み聞いちゃえ。
「万にしては、珍しいな」
「何が?」
「いつもなら簡単に情報を手に入れてくるのに、今回に限っては何も掴んでないんだろ?」
真剣な面持ちのあず兄に、ゆーちゃんが「確かにぃ」と頷く。
そういえば、あず兄ってバンちゃんが悪魔だって知ってるんだよね。
怪訝そうにするのも無理はない。



