絶対領域




たぶん心の中ではとっくに、あず兄の考えを理解できていたんだろうな。



ヘーゼル色の瞳が、弱々しげに私を一瞥する。


よしよしと頭を撫でてあげたら、照れくさそうに口の端を力ませた。



続けて、私の奥のあず兄を見据える。




「そういえば、あずき兄さん」


「ん?」


「姉ちゃんにあげたオルゴール、壊れたよ」


「は!?」




うわー、今教えたの絶対わざとだ。

正論すぎてムカついちゃったのかな。


まさかこんな風に報告することになるとは。




「こ、壊れたって、なんで!?」


「さあ?」


「お前が壊したんじゃねぇだろうな!」


「違うよ。……壊したかったのは否定しないけど」


「やっぱお前なんじゃねぇか!!」


「違うってば。俺を何だと思ってんの?俺が姉ちゃんの物を壊すわけないじゃん」


「じゃあなんで壊れたんだよ!」


「知らないよ」


「知らねぇはずねぇだろ!」


「ほんとに知らないんだって。ていうか、どうしてそんな怒ってんの?気分で贈っただけって言ってたよな?」


「……そ、そりゃ、自分が贈った物が壊れちまったら嫌だろうが」


「ふーん?でも、結局はノリであげただけなんだよね?」


「……あ、ああ」


「なら違う物をプレゼントしないよな。壊れたからって新しく買って贈るとか、好きな人に貢ぐのとおんなじだしね」




あーあ。

面倒なことになった。


オルゴールの代用品を受け取り拒否してくれるのは有難いけど、シスコンモードで追い詰めないであげて。