絶対領域




皆とは付き合い長いし、別に今更恥ずかしくないけど……けどさ!


今はさすがに空気読めてないよね!?



でも仕方ないじゃん!

起きたのさっきで、ご飯食べてないんだもん!



項垂れれば、皆は小さく微笑んでくれた。




「萌奈ちゃん、何か作ろうか?」


「いいの?」


「簡単なものでいいなら」


「やったー!久し振りにバンちゃんの手料理が食べれる!」




バンちゃんって手先が器用だから、一通りなんでも作れちゃうし、美味しいんだよね。


今日は何を作ってくれるんだろうな。



ワクワクしながら、キッチンへ移動したバンちゃんと入れ替わりであず兄の隣に座る。


今の今まで焦っていたのにころっと態度を変えた私に、皆はより一層表情筋をほぐした。



「せーちゃんも座らないの?」



何気なく聞いた後で、ハッとした。


そうだ、せーちゃんとあず兄で口論してたんだった。

料理につられて忘れてた……。



また言い争うと思いきや。



「……一気に頭が冷えた」



再開するどころか、落ち着きを取り戻した。


左目を半分隠しているモスグリーンの毛先を、気まずそうにいじりながら、私の横に腰掛ける。



無理に自分の考えを押し通さないんだ。えらい。

不器用なひねくれ者にしては、素直になったね。