絶対領域





一気に脱力して、片足を下ろす。



待って、信じられない。

“あなた”が、今、目の前にいるなんて。


これは、幻覚?夢?



「現実、だよね?」


「……っ」



驚いている“あなた”が新鮮で、胸が甘く高鳴る。



より大人びた背格好も、色もスタイルも変わった髪型も、左目の下にあるほくろがある美形な顔立ちも。


私の知ってる、“あなた”の面影のまま。



もっと今の“あなた”を目に焼き付けていたいのに、瞳が潤んで、輪郭さえ霞んでいく。




「会いたか……」


「おい、探したぞ」



触れようとした手を見て見ぬフリして、私の横を通り過ぎた。


私ではなく後ろにいる学ランの男の子に話しかけ、私の存在を無視する。




「へ?……あ、ああ、ごめん。でも、いいの?あの子、知り合いなんじゃ……」


「別に」


「え?」


「知り合いでもなんでもない」




心臓を深く、深く、えぐられる。

涙も枯れてしまうほどに。




会いたかった。


ただそれだけ、伝えたかった。