「俺は嬉しかったよ」
意外な一言に驚く私を横目に、無傷の天使を掴む。
棚の上に置いて、一撫でした。
「これでもう、姉ちゃんが泣くことはないから」
こちらに向き直したせーちゃんは、複雑そうに苦笑していた。
……知って、たんだ。
夜な夜なオルゴールを鳴らして、感傷に浸っていること。
いつから知ってたんだろう。
声を詰まらせていると、せーちゃんは扉のほうに歩き出した。
「俺、ホウキとか持ってくるね」
「あ、う、うん……」
バタン。
扉が閉まって、部屋に一人取り残される。
お互いに気づいていないところで、たくさんの想いを隠していたんだね。
せーちゃんには、心配かけてばっかりだ。
お姉ちゃん失格だね。
「でも、今夜も心配かけちゃうんだよなぁ……」
懲りないな、私も。
“あの時”からずっと、こう。
私は今まで、どれだけの秘密を抱えてきたんだろう。
オルゴールだった物を眺める。
日差しで欠片が輝いていた。
このオルゴールみたく皆の関係を、双雷と神亀を壊させない。
オリの居場所を、守り抜いてみせる。
秘密が秘密じゃなくなるように。



