私もせーちゃんのほうに近づいて、残骸と化したオルゴールを見つめる。
触ろうとしたら、せーちゃんに止められた。
「ケガするかもだから、触っちゃダメだ」
仕方なく手を引っ込める。
床がキラキラしてる。
ネジやガラスが落ちている中に、砕けた悪魔と唯一無事の天使が横たわっていた。
お気に入りではなかったのに、いざ壊れてしまうと喪失感に襲われる。
二度と歌を聴けないし、天使と悪魔は踊れない。
永遠の別れみたいだ。
「オルゴールが壊れたって知ったら、あず兄は怒るかな?悲しむかな?」
「あずき兄さんなら少し悲しくなって、不機嫌になって、また代わりの物を贈るんじゃねぇの?」
「あはは、確かにそうかもね。代わりの物なんか要らないのに」
「またプレゼントしそうだったら、俺が食い止めてやる!」
わあ、頼もしい。
せーちゃんも、すっかり男の子になったな。
私に守らせてくれないくらい。
「姉ちゃんは?」
「え?」
「姉ちゃんは、オルゴールが壊れて怒ってる?悲しんでる?」
「……悲しいよ?」
すっごく悲しくて、虚しい。
砕け散ったオルゴールが、不穏な予感を知らせているようで。
不安になる。



