さよならのキスをした真夜中の公園で、またこうやって萌奈と向かい合える日が来るなんて想像していなかった。
これも、運命なのだろうか。
「オリもいつか、誰のためでもない自分のために、泣けたらいいね」
もう泣いたよ。
萌奈と別れてすぐに。
だけどそのことは、秘密にしておく。
「涙を我慢しなくなれば、いいね」
おもむろに瞼が伏せられる。
うっすら赤くなった目元は、わずかに潤んでいた。
我慢くらいする。
それだけで強くなれるのなら。
これから先、泣けなくたってかまわない。
「そんな日が早く来てくれるように、私も頑張るよ」
「……え?」
頑張る?
何を、しようとしてるんだ?
ドクン、と心臓の下らへんが痛々しく跳ねる。
なぜかひどく憂いた。
萌奈は頬から俺の手を優しく剥がして、真ん中にぎゅっとまとめた。
両手を自分の手でくるんで、握る。
変わらずあったかくて、心地よい。
「ねぇ、オリ」
名を呼ぶ、その声も。
懐かしい、この温もりも。
全部、全部、“あの時”に置き去りにしてきた。
なのに、愛おしさと共に、よみがえってくる。
「もし気づいちゃっても、知らないフリをしてね」



