公園を去り、すぐに走った。
当てもなく、月明かりに照らされた夜道を突き進んでいく。
涙が止まらなかった。
さよなら、萌奈。
ずるくてごめん。
出会ってくれてありがとう。
大好きだよ。
この運命を守り続けながら、逃げていく。
今夜からは、たった独りで。
もし、神様のいたずらで、また巡り合えたら。
そしたら、その時は。
俺はもう一度、運命を信じられるだろうか。
今度はそばで、守れるだろうか。
この街に長居していられない。
せっかく萌奈だけでも自由にしたのに、追手が俺と関わった奴を狙ったら元も子もない。
紅組の標的は、俺。
萌奈が安全に過ごせて、かつ追手をかく乱させられるよう、偽造パスポートで日本を出国した。
幸い英語は話せたから、生活に支障はなかった。
初めはあらゆる国に逃げ回っていたが、やがて追手の姿をほとんど見なくなり、アメリカに滞在するようになった。
割のいいバイトをしながら、偽名を使って学校にも通った。
17歳になり、飛び級して大学を卒業したのを境に、日本に帰国した。
ちょうど日本で屈指の有名進学校である、白薔薇学園から特別枠としてスカウトされていたのを口実に、萌奈の地元に再び訪れた。



