守りたいと、願っていた。
だけど、きっと、本当は。
萌奈にずっと、守られていたんだ。
今度は、俺が守るよ。
もう苦しませない。
そばにはいられないけれど。
『ごめん。もう、お別れだ』
これが、最後のわがまま。
こんな身勝手な俺を許さなくてもいいから、どうか、こんな守り方しかできない俺を忘れないで。
『ごめんな』
『え?待って、どういうこと?なんで?』
ついに笑顔が崩れた。
今にも泣き出してしまいそう。
『髪を切られたから?私が、傷を負ったから?』
図星を突かれて、黙り込んでしまった。
ああ、そうだ。
傷ついて当たり前のこちら側に巻き込んだ償いになるかはわからないけど、萌奈を普通の日常に戻してやるんだ。
たとえ、これが俺のエゴだとしても、決めたんだ。
『じゃあもう傷つかない!オリのことも、傷つけない!だから……!』
『ごめん』
わざと遮った。
続きを聞いたら、またすがってしまう気がした。
傷つかない、なんて、無理だ。
なんたって萌奈は“天使”で、正義感あふれるヒーローだから。
俺といたら、嫌でも傷つき、傷つける。
血に飢えた残酷な世界は、萌奈には似合わない。
それなら、この手を放してやればいい。
それが萌奈を絶対に傷つけない、唯一の正解。
たぶんこれからはもう、萌奈の手を握れないし、握らない。
『……ずるい。ずるいよ、オリ』
『ごめんな』
何度目かの懺悔を呟きながら、たどたどしく短い髪から指を下ろしていった。



