絶対領域





『萌奈』


『……オリ』



強く、それでいて優しく、俺も握り返す。


手のひらをぴったりと合わせた。



『逃げるぞ!』

『うんっ』



強敵を律儀に相手していても、体力を削られる一方だ。


だったら初めから、争わない。


脱走者らしく逃げてやる。




『敵前逃亡かよ』


『妥当、か。俺ら幹部に敵うわけねぇもんな』


『あはは、だっせー!』



聞こえてるぞ、入れ墨ヤロー。

嗤いたきゃ嗤えばいい。


ダサくとも格好悪くとも、生きて逃げられたらそれでいいんだ。



『ここでみすみす見逃すわけねぇな』


『追いかけるぞ』


『は、はい!』



やはり敵もこっちに走ってきやがった。


幹部2人は距離を縮めることを最優先に、入れ墨の男は幹部の指示で走りながら俺たちにナイフを飛ばす。



ナイフは、警戒しないでいいだろう。

走ってるせいかヘロヘロのへにゃにゃで、俺たちまで届かない。



幹部2人に追いつかれてしまわぬよう、俺と萌奈は全速力で駆けていく。




少しずつ距離を詰められているが、萌奈の地元に入ればこっちのもんだ。



土地勘があるのとないのとじゃ、大違い。


戦略や逃げ道を設定しやすくなり、圧倒的にこちらが有利になる。