絶対領域





『よう、久しぶりだな、緋織』


『今までよく逃げてこれたな。捜すのに苦労したぜ。まあ、今見つけられたのは偶然だがな』



入れ墨の男と一緒にいる2人の大柄な男は、おじさんと同じ、紅組の幹部だ。


何度か世間話をした程度だが、実力はよく耳にした。



下っ端と幹部では、力量の差は明白。

しかも2人もいる。


今までで一番のピンチだ。




『おいおい、返事もねぇのかよ』


『反抗期か?』



お気楽に笑う幹部2人に、いちいちリアクションを取ってやれるほど、今の俺に余裕はない。



幹部1人ならまだしも、2人+入れ墨の男。


これが戦闘だったら、敗北は免れなかったかもな。



戦闘ではなく逃亡で助かった。


わざわざ勝とうとしなくていい。

逃げられたらいいんだ。



だけど、凶悪すぎる魔の手から、逃げられるのか?




不安に押しつぶされていく俺の手を、きつく握りしめられた。


相も変わらず結んだままの、手と手。

萌奈の温もりが、じわり、滲む。



隣を一瞥すると、萌奈は美しく笑って頷いた。



ひとりじゃない。

大丈夫。



言葉にしなくても、伝わってくる。



……そう、だよな。

気持ちで負けてたら、ダメだよな。


何の根拠もないけれど、自信を持っていよう。



守り抜くんだ。


2人の明日と、この想いを。