絶対領域






出会ってから、二度目の春。


麗らかな日差しが、桜のつぼみを撫でていた。





真夜中。

閑散とした町の小道をたどる。


寝泊まりできそうな場所が見つからずに、野宿にしようか迷っていた。



『この道を真っ直ぐ行けば、私の地元だよ。そっちで探す?』


『ああ、そうだな。そっちのほうが、土地勘もあるし』



この道は、萌奈の地元の西側に通じている。


知らない場所で野宿よりは、親しみのある場所のほうがいいだろう。



『じゃあそうし』

よう、と続くはずだった萌奈の声が、消えた。



背筋に敵意をぶつけられる。


この感じ……もしかして……!?



咄嗟に上半身を傾ける。


ほとんど、本能的だった。


おそらく萌奈もそうだろう。

だが、ほんの0.1秒、反応が遅れてスカートの裾が破けた。



地面に金属音が転がる。


あれは、ナイフだ。俺の首を狙った物と、萌奈の足元に投げた物の2つ落ちている。



ナイフ、か……。

妙な既視感があるのは、気のせいではない。




『よく避けられたな』



後ろから声がして振り返れば、予想通り、以前出くわした男がいた。


首筋と左腕に入れ墨のある、あの男だ。



しかし、今回は単独ではない。


横に2人、携えている。


……いや逆か。

入れ墨の男が、携えられているんだ。