絶対領域






ざわめきを残して遠ざかった大通りでは。

小柄な少年が、俺たちの行った方向を見据えていた。



『お礼も言えなかった……』



胸元をぎゅっと握る。


そこには確かに、憧憬が芽生えていた。



『いつか恩返しができたらいいな。あの人の名前、なんだっけ……あ、そうだ』



変化の兆しは、いつだって突然。



『天使だ』




各々に成長と思慕をもたらす、この邂逅から3年後。


何の因果か、再会することになるなんて、今は誰も知る由はない。






夕日が堕ちて、月が瞬き、太陽が目醒める。


強さを剣に、弱さを盾に、愛を癒しに。

天国と地獄を往来した。






季節が移ろう頃には、街全体に天使の噂が知れ渡っていった。


その背後で、もうひとつ。

脱走者の噂も密かに流れていた。



不規則に逃げた。


度々追手に襲われたが、お互いの手をほどかなかった。



刺々しい光も、囚われた闇も、2人でなら抱きとめられる気がした。





けれど、やはり、終わりは訪れる。


永遠だと信じていたかった逃亡生活は、ある日唐突に幕を閉じた。



……俺が、自ら、終わらせたんだ。