絶対領域





『……私も』



ぎこちなく指と指が絡んだ。


力を強めれば、いっそう近くに感じられた。



緩やかに顔を上げていく。



『強くなりたい。どんなことがあっても、あなたを守れるように』



萌奈は頬を濡らしながら、微笑んでいた。



どうしてお前が泣いてるんだよ。

俺のために泣かなくていいんだよ。


ポロッとこぼれ落ちた涙が、ひどく綺麗で、愛おしかった。




『好きだよ、オリ。大好き』



好き。

その2文字を、初めて贈られた。



胸の奥底が熱くなって、ほろ甘くとろける。


ちょっとだけ苦しいけど、この苦しさならいいよ。



なあ、もっと苦しくさせてくれよ。




『俺も、好きだ』



キスをした。


まずは、涙をためた目元。

次に、泣き跡の残った頬。


それから、俺の名を呼ぶ、その唇。



深く、深く、溺れてしまうくらい深く。


唇が痛くなるまで、ついばんだ。




『ねぇ、オリ。私に強さを教えて?』



頷く俺に、萌奈は目尻を垂らせた。



一緒に強くなろう。

ずっとそばにいるために。





その日は畳の上に寝転がった。


家の中は広いのに、2人ぴったりくっついて、抱き合うように眠りについた。



おやすみ、と。

好きな人にそう囁くだけで笑顔になれたのは、なぜだろうか。