絶対領域




瞼の裏で燦然と輝く星々に、くすんだ鮮血が乱雑に塗りたくられる。



泣きたい。

泣けない。


枯れた涙の代わりに、散々呻【ウメ】いた。



『逃げろと言われたけど、一回だけ振り返っちゃったんだ。そしたら、首を、はねられてた』



紅組の敷地からうまく抜け出せた……はず、だった。



一歩出た瞬間に、警報が鳴り渡って。


おじさんの血が、生々しく飛び散った。



『あの人だけだった。紅組の中でたった一人、おじさんだけが、俺の味方で大事な人だった』



ごめん、ごめんなさい。

そう謝りながら、深夜の街を逃げていった。



まともに機能しない手足を必死に振って、声が出なくなるまで叫んだ。


途中で紅組の奴らに追いつかれたけれど、無我夢中に戦って、撒いて、逃亡した。




俺だけが無事で、自由になれて。


嬉しいはずなのに、ちっとも喜べなかった。



そんな時だ。

あの公園で、萌奈と出会ったのは。




『もう、大事な人を、失いたくない』



これが今の、俺の願い。



『今度は俺が、体を張って守るんだ』



おじさんのように。

俺も。


守れるのなら、どれだけ傷ついたってかまわない。