既に、極道のルールにがんじがらめになってしまっている自分が、無性に嫌になって。
自由になりたかった。
普通に生きてみたかった。
中坊のガキだったから人殺しの依頼をこなしたことはなくとも、俺はもうとっくにどっぷりと紅色に染まってしまっているというのに。
『身のほど知らずなわがままだったのに、おじさんはなだめずに受け入れてくれた。俺のために脱走計画を立てて、協力してくれた』
『……優しい人、だね』
『ああ、すごく、優しかった』
この計画を手伝ったとバレたら、タダじゃ済まない。
それをわかった上で、単なる甥である俺のわがままを聞いてくれた。
どうやったって恩返しできない、あまりにも優しすぎた人。
『それで脱走して、紅組の人たちから逃げてるんだね』
萌奈の眼差しが、チカチカ、眩い。
光のないこの部屋では、より映えている。
直視できなくて、萌奈の肩に額を当てた。
『……俺の、脱走で、』
息が、続かない。
浅くなって、喉を締め付けられる。
『おじさんが、犠牲になった』
萌奈の鼓動がドクン、と大きく跳ね上がったのが、俺にまで伝わってきた。



