刹那。
――ガンッ!
「今の……」
遠くからうっすらと、聞こえた。
鉄パイプで何かを殴った音が。
その音は、繁華街の活気によって、すぐにかき消されてしまった。
他の人は何も異変に気づいていない。
ただ一人、私以外。
「さっきの音……2つ目の路地のほうからだった」
衝動的に、走っていた。
あず兄、ごめん。
すぐ戻るから、許して!
「ここ、かな……?」
雑貨屋さんからさほど離れていない、細い路地。
陰に隠れて様子を窺う。
路地の奥では、あず兄と同じ不良らしき学生が、一人の男の子を囲んでいた。
不良たちは鉄パイプを持って、脅している。
学ランを着た、小柄な男の子相手に。
「やっぱりここだった」
喧嘩?リンチ?
どちらにせよ、弱者一人に対して大勢でいじめるのは、最低な反則だ。



