絶対領域





制服姿を多く見かける。

……あ、そっか、放課後の時間帯だもんね。



私も立派な中学生だけど、登校しない不真面目な生徒になってからは、何の変哲もないルーティーンが懐かしい。


お母さん、お父さん、せーちゃんやあず兄たち……皆どうしてるかな。元気にしてるかな。



私は、元気だよ。幸せだよ。




『萌奈』


『何?』


『こっちの道、行くぞ』



グイッと繋いでる手を引っ張られた。



2人でいる時のほとんど、こうやって手を握ってる。


名前もいっぱい呼ぶし、キスもいっぱいする。



ちゃんとそばにいるよって、伝え合ってるんだ。




雑踏に紛れながら、狭い路地に入った。


途端に人気が激減した。


奥へ奥へ進んでいくと、雑音さえ遠くなる。




『……ね、ねぇ、なんか歩くの速くない?』


『しっ』



路地に来てから急に早足になったことを突っ込んだら、やけに切羽詰まった様子で唇に人差し指を添えた。



静かに、って……どういうこと?

どうしてオリは焦っているの?



疑問は山ほどあったが、指示通りに口をつぐんだ。


黙ってオリについていく。