絶対領域







出会いは、満月。

全ての始まりの証人。



だんだんと、確実に。


透明な光は褪せて、欠けていく。






逃亡生活は、オリの言っていた通り、過酷なものだった。



学校に行かずに、転々と何かから逃げて、逃げて、逃げて……。


まともにご飯を食べられない日も、年齢を偽って単発のバイトをする日も、隣県まで行く日も少なくなかった。




この生活をやめたいと考えたことはない。


一日一日過ぎていく度に、もっと一緒にいたくなる。



大変だし苦労も多いけれど、オリとならなんだって耐えられた。





出会いから、約1か月。

桜はとうに散ってしまった。



私は未だに、大してオリのことを知らない。


知っているのは、ひとつ年上で、頭がよくて。



失うことを恐れていること。





『オリ』


『ん?』


『もうすぐ日が暮れる。そろそろ寝泊まりする場所、探さないと』


『ああ、そうだな』




隣の市の繁華街。

賑わう大通りを歩いていても、誰も不審には思わない。



むしろ、主に女の子たちがイケメンなオリに見惚れたり、デートだと勘違いして羨ましがられたりする。