絶対領域






『お前は?』


『え?』


『名前』



あ、そっか。

自己紹介してなかったね。



『萌奈。矢浦、萌奈』


『もな、か』



ただ名前を反すうされただけなのに、おかしいな。


ほっぺが火照っていく。




『ねぇ、オリ』



オリの頬から手へと、自分の手の行き場を移動させて、オリの冷たい手のひらを温める。



『一緒に、いさせて……?』



どれだけ危険な場所であろうと、かまわない。


家族に心配かけちゃうだろうけれど、オリを放っておけない。



きっとこういうのを、一目惚れと呼ぶんだろうな。



退廃した公園に2人きりなせいか、世界に私とオリしかいないように思えてくる。


たとえ今だけの錯覚でも、いいの。

この出会いは本物だから。



『あなたと一緒に“い”きたい』



行きたい。

生きたい。


いつまでも、どこまでも。




『……いい、のか?』



不安と喜色を織り交ぜた表情が愛しくて、口の端が緩んだ。




『うん、いいよ』


『俺のいるとこは、お前の日常とは違ぇんだぞ?』


『いいってば』


『俺といると、お前まで狙われて殺されるかもしれねぇっつったろ?』


『しぶとく生きるって言ったよね、私』


『俺との生活は、普通じゃねぇ。地獄よりも過酷な時だってある』


『何度も言わせないで!全部承知の上で、オリのそばにいたいって言ってるの!耳までやられてるの!?』