絶対領域





大きな桜の木の下。

ポツンと寂しく置かれた、木製のベンチ。


そこに一人の男の子が、深く腰かけていた。




『……いた』


あず兄やしん兄よりも、かっこいい人。



下を向いていて顔全体はわからないけれど、直感的にそう確信した。


さっきとは別の意味で、血が騒ぐ。

熱く、熱く。



なぜだろう。


足が勝手に、あの男の子の元へ動いていく。


自分が自分じゃないみたいだ。



まるで、神様に踊らされているよう。




もつれながらも距離を縮めていくにつれ、あの男の子を遠く感じた。


遅咲きの桜が散っていくように、彼も儚く消えていきそうで。



なんだかひどく切なくなる。




『あ、あの……』



あれ?

なんで私、当たり前のように声かけてるんだろう。


我に返った時には既に遅い。



『…………』


『あ、あの?』



目の前に来て、話しかけてみても、応答がないどころか目も合わない。


シカト?



……というか、目ぇ開いてるのか閉じてるのかわからないくらい、朦朧としてない?



よく見たら……いや見なくても、俯いた顔は傷だらけだった。


身に纏っている服もボロボロ。



唯一綺麗なのは、色素の薄い栗色の髪だけ。