え?事実?
なんで、はっきり断言できるの?
まさか。
「……知ってるの?」
栗色の目をまん丸くする私を横目に、ワンレンの前髪をかき上げた。
「ああ。……といっても、俺が知ってるのは、悪魔だけだけどな」
ガラスの向こうでおとなしくじっとしているオルゴールは、ピクリとも音色を奏でない。
天使と悪魔のワンシーンを、寂しそうに称えるだけ。
「探して、会いに行ったんだ」
「……どうして?」
灰色の瞳に、私がぼやけて映り込む。
あず兄は乾いた唇を一度閉じて、また、開いた。
「お前の情報が、少しでも欲しくて、な」
不格好な苦笑を漏らして、視界から私を外した。
チクリ。
胸に刺さったトゲが、痛い。
悪魔に魂を売ったみたいに、無理して笑わないでほしいのに。
私にそう告げる資格がないのが、ひどく虚しくて、悔しい。



