2人だけだった帰り道に人気が増えて、だんだんと賑やかになっていく。
繁華街に入ったんだ。
夏休み明けの、浮かれた雰囲気。
残暑に塗れた空気感を、熱気が包む。
「……あ」
ふと視界の隅に入った物に惹かれて、思わず足を止めた。
繁華街にある、おしゃれな雑貨屋さん。
ガラスの向こう側に、道沿いに見えるように置いてある、ある小物。
天使と悪魔の人形を頂上に飾った、オルゴール。
「天使と、悪魔……」
窓ガラスに手をついて、ソレをじっと見つめる。
どれくらい前からだったか。
ある日、この街にある噂が流れた。
その噂は、不良にも学生にも、ところかまわず根付いている。
「この街には、天使と悪魔がいる」
右耳に響いた低い声に、びくっとなる。
振り向けば、いつの間にやら私の隣にあず兄がいた。
てっきり先を歩いてると思ってた。
「……んだっけか」
「有名だよね、その噂」
「事実だしな」
なんてことないようにさらっと呟いたあず兄に、驚かざるを得ない。



