本当なら、1年早く、あず兄と同じ学校の制服を着れていた。


どこにでもいる平凡な高校2年生として、たくさんの友達を作っていた。



あず兄が髪を金色に染めて、ピアスを開けて、不良デビューすることも、きっとなかった。


あず兄とせーちゃんが、ここまで心配性な過保護になることも、なかったんだ。




――“あの時”に、私の“普通”が壊れることさえ、なければ。





「やっぱり、1年の留年って大きいよね。私だって逆の立場だったら、留年した子との接し方に悩むよ」


「萌奈なら、きっかけさえあれば、誰とでも仲良くなれるさ」


「そのきっかけ作りが難しいって話じゃん!」



唇を尖らせたら、あず兄は「はいはい」と眉尻を垂れ下げた。




私のせいで、ごめんね。

そう謝ったら、たぶん、怒られちゃうから。



代わりに、笑わなくちゃ。


“あなた”がそばにいなくても。