絶対領域





カップを持つ手が、わずかに震えた。


鼓動が一瞬激しくなる。



おかしいな。

なんでだろう。


コーヒーの味が、甘い。




「それら全てを緋織氏が語ったわけではないが、語らずとも手に取るように理解できた。……なぜだろうな。どれだけ憎んでおっても、いとこであるのは変わらないからであろうか。それとも、我と緋織氏が似ているからであろうか」


「……どっちも、じゃないかな」


「どちらも、か。……そうか」



オウサマは力なく瞼を伏せた。


心なしか、嬉しそうだった。




「トーキングして、緋織氏は心根の熱い、不器用な男だとわかった。我と緋織氏の敵が同じであることも」


「だから『良き理解者であり、協力者であり……同志』なんだね」


「うむ、そういうことだ」


「その時に復讐心は完全に消えたの?」


「……完全ではないが、復讐しようとは思えなくなった。緋織氏は決してのうのうと生きてはおらず、むしろ我よりずっと重いものを背負っていたゆえ、これ以上憎むことなど我にはできなかったのだ」




ほら、そういうとこだよ。

オウサマは優しすぎるね。



普通は『トーキング』しただけで、復讐相手から味方にはなれない。


オリを理解できて、協力していられるのは、オウサマだからなんだろうな。