絶対領域






「オウサマも、でしょ?」


「我の場合は、わかりやすいであろう?」


「外見を父親に似せたんだっけ?」


「イエス。稜が忘れても、我は忘れてしまわぬように。また、稜が記憶を取り戻すトリガーになれば、と期待しているのだ」




ヘアピンとピアスの表面が、キラリときらめいた。


もしかしたら、オウサマの父親が「ありがとう」と伝えたのかもしれないね。




「父に似た我を見て戸惑う緋織氏を、我はやはり憎んでしまった。緋織氏が双雷にやって来たのは、神が復讐せよと命じてるからに違いないと考えてしまうほどに」


「でも、復讐しないで、こうやって話したんだよね?どうして?」



そこまで憎んでいて、父親の仇を討とうとしていたのに。


何をきっかけに、オウサマの呪いが解かれたの?




「……気がついたからだ」



怖いくらい完璧だった、目の前の表情が。

炭酸が弾けるように、あどけなくほころんだ。



「緋織氏を常に観察し、復讐の機会を窺っているうちに、気づいてしまったのだ。時折、何かを捜すようにどこか遠くを見る、緋織氏に」



褐色の双眼に、明瞭に私が映る。


胸の奥が熱くなった。



「遠くを見るその目が、とても優しく、切ないことに」



……自惚れても、いいのだろうか。