「父が我に貸してくれた1冊のブックに、1通のレターが挟まれていたのだ」
遺言、だろうか。
オウサマの父親は、いつ、本の中に手紙を隠したんだろう。
いつから、覚悟していたんだろう。
「おそらく、我宛てに真実を残してくれたのだろうな。『稜には時を見て伝えてほしい』と初めに記されていた」
「……そこに、全部、書かれてたの?」
「日記の如く、ありありと綴られておった」
クリームソーダを一口ストローで吸って、また口を開く。
「父が紅組の幹部であること、我にはいとこがいること、そのいとこは紅組の下っ端であること、いとこを自由にしたいこと、脱走を企てていること、その脱走を実行したら父は十中八九殺されるであろうことまで……全て、な」
ご丁寧にいとこの写真とプロフィールまで封入されていたらしい。
その手紙で、いとこの存在を認識したんだ。
……それが、たった3年前。
「父のことはずっと平凡なサラリーマンと思っておったゆえ、最初は半信半疑であった。……が、その翌日に例の噂を偶然聞いてしまってな」
「すごいタイミング、だね」
「ははっ、そうであろう?噂に信ぴょう性など無いも同然であるが、レターの内容とあまりにマッチしすぎていた。そして、その時ようやく、自然と受け入れられたのだ」
表の世界と裏の世界は、決して繋がり合わない。
まるで、光と闇。
ありふれた尋常と、並外れた異常。
だからこそ、容易く踏み込めないし、抜け出せない。



