「唯一違うところといえば、この目の色だろうか」
オウサマの瞳が、窓ガラスに反射された。
濃い褐色に染まる瞳。
ひだまりだらけの大地の色みたい。
「父は綺麗なレッド、赤色であった。我には愛しい弟がおるのだが、弟は父と同じ目の色をしている」
「オウサマにも弟がいるんだ」
「うむ。8つ離れた、愛くるしい弟がいるぞ。名を稜【ロウ】という。良き名であろう?」
わっ、初めて見た!
オウサマのデレデレ顔!!
オウサマってブラコンだったんだね。
「……だが残念なことに、稜は父のことを憶えてないのだ」
「なんで……?」
「記憶喪失なるものになってしまったのだ」
記憶、喪失……。
単語自体は聞いたことはあっても、どれもフィクションの話で、あまり現実味を感じない。
記憶を失ったら、失われたら。
どうなってしまうのだろう。
抽象的な想像すら、できない。
「まあ無理もなかった」
ぐにゃり。
初めて、オウサマの微笑が、歪んだ。
「父の生首が、玄関に置かれていたのだから」
ぞっとした。
息すら吐き出せない。



