絶対領域




意味がわかりづらい。

どういうこと?


ちんぷんかんぷんな私から下へ、オウサマの視線が滑っていった。



「それより、よいのか?」


「へ?」


「コーヒー、冷めてしまうぞ?」



いつの間にか、コーヒーから湯気が散っていた。


ソーダに濡れたアイスを頬張るオウサマにつられて、私もコーヒーを飲む。



……ちょっとぬるい。




「数年前、紅組に脱走者が出たことを存じておるか?」



生唾ごと、コーヒーを流し込んだ。


いきなり世間話っぽく始めるんだね!?



反射的に顔を上げても、オウサマはクリームソーダに夢中で、こちらを見向きもしない。


初めから答えを察してるみたいに。




「うん、知ってるよ」


「その脱走者が、緋織氏だということは?」


「知ってる」




オリは、3年前まで紅組の下っ端だった。


脱走した先で、私と出会い、一緒に逃げた。



紅組の追手を撒きながら、お互いを守っていた。



“天使”としての強さも、一生ものの愛も。

オリが、教えてくれた。




別れ、再会した今でもなお、オリは苦しんだままで。


たった独りで、逃げ続けている。





「……では、緋織氏の脱走に協力者がいたことは?」


「知ってる」


「協力者はすぐに組員に捕まり、その場で処刑されたことは?」


「うん、それも、知ってる」




オリから、聞いた。


自分の脱走で犠牲になった人がいる、と。



紅組で唯一、心から信頼できる人だった、と。