こうやって他愛ない会話をしていると、あず兄が不良だってことを忘れそうになる。


本来は、暴走族に入っていて。

その上、一番えらい総長っていう役職なんだけど。



一見怖そうな立場でも、私にとっては、ちょっと過保護なお兄ちゃんなんだよね。



「クラスには馴染めたか?」



……ほらね。

やっぱり、いつまで経っても私を子ども扱いする、優しいお兄ちゃんだ。



「さっきの見てたでしょ。全然だよ」



西校のブレザーを着るようになって、半年。


夏休みが明けても、一向に友達ができない。



花のJK、ピカピカの高校1年生。

今年の春にようやく高校生になれたのに、青春らしい生活を送れている気がしない。



胸元を飾るリボンのタイは、私にJKの魔法をかけてくれやしないんだ。