絶対領域





それくらい紅組の上層部には、底知れない強さがある。

裏の世界を牛耳ってるだけある。



そんなやばい中のやばい極道、紅組の数少ない失態。


脱走者について、俺と萌奈ちゃんは詳しすぎるほど把握している。



……だから、一緒にいるこの機会に、まとめて殺ろうとしたのか?



いや、だとしても。

格下の連中を使った、昨日の下手なやり方は、あまりにお粗末すぎる。


そもそも、もっと早く消すことだってできたはず。




紅組の行動や策略が、不可解だ。


まだ何か企んでそうで、怖い。



皆を心配する萌奈ちゃんの気持ちに、激しく同感だ。



「……そう言うと思ったよ」


「わがままで、ごめん」


「ううん。俺も、今はまだ打ち明けるタイミングじゃないと思う」



紅組が俺たちを襲う理由はわかっていても、次の戦略や真意は定かではない。



せめて、こちらが対応できるくらい調べ上げられるまでは、皆には黙っておくべきだろう。


恐怖心を植え付けたり、変に警戒して大騒ぎになったりしたら、隙ができて狙われやすくなってしまう。




「でも、皆に隠すとなると、萌奈ちゃんは独りで俺たちを守ろうとするだろ?だから、すぐにでも正体を明かさなきゃって思ったんだ」



天使であろうと、紅組相手に無謀だ。


そう諭したところで、萌奈ちゃんは盾になるのをやめはしないだろうね。



ほら、萌奈ちゃんはあずきに似て、頑固だから。