絶対領域






「紅組が、動いたからだ」




ひゅっ、と萌奈ちゃんの喉が絞まった。


俺も萌奈ちゃんも、表情はどこか硬く、険しくなる。



「昨夜、萌奈ちゃんが聞き出しているのを聞いちゃったんだ。昨日の騒動の黒幕が、紅組だって」


「……バンちゃんも、聞いてたんだ」



高い声音が、少しずつかすれていく。


わずかなクレオメの香りが、保健室独特の匂いに吸収されていった。




『そ、双雷と神亀をかく乱しろ、できるなら一人でも多くぶっ潰せって言われて、それで……っ』


『ふーん?紅組、ねぇ』



なんで今更。

そう思わざるを得なかった。


紅組の考えは理解できないが、どうにかしないといけないのは確かだ。


また無価値な戦いをしたくない。




「紅組が、俺たちをかく乱させたい理由は、見当がついてる。だけど、萌奈ちゃんは、皆に教えたくないんだろ?」


「……うん。もう既に巻き込まれてるのは百も承知だけど、皆まで紅組に目を付けられたらと思うと、怖くてたまらない」



今の神亀と双雷じゃ、束になっても紅組には敵わない。



下っ端なら倒せるかもしれないが、幹部クラスには到底及ばないだろうな。


頑張って幹部一人倒せるかどうか程度だ。



最悪、こっちが潰されて終わり。

ゲームオーバーだ。